2012-12-11
三井寺
あらすじ
行方不明の息子千満を探す母が、清水の観音に参詣し、三井寺に行けとの霊夢を蒙り寺へと向かう。一方、千満は三井寺の住僧の弟子となっていた。中秋の名月に住僧は千満を伴い月を眺め、能力は千満を慰めるために舞を舞う。そこへ狂乱の母が来て、能力が鐘を撞くと母も鐘を撞こうとして制止される。だが母は鐘にまつわる様々な事を語り制止を退け鐘を撞く。その様子に千満は狂女が母と気付き、親子は再会を果たして故郷へ帰って行く。
次第 ワキとワキツレ
秋も半ばの暮れ待ちて 秋も半ばの暮れ待ちて
月に心や急ぐらん
中秋の今日(陰暦八月十五日)の日暮れを待ちかねて
早く(名月の日の)月を見たいと心がせかされることだ
(ひとこと)
名月ではな,く桜の盛りを見たいを見たい時には「花に心や急ぐらん」。簡潔で的確な言い回し。
ただ私は「秋の半ば」で8月15日には思い至らず、「暮れ」が日暮れとはわかりませんでした。
キリ 地謡
かくて伴ひ立ち帰り かくて伴ひ立ち帰り
親子の契り尽きせずも 富貴の家となりにけり
げにありがたき孝行の
威徳ぞめでたかりける 威徳ぞめでたかりけり
こうして子を連れ帰り
親子の縁は尽きることもなくて 富貴の家となったのだ
まことにありがたい孝行の功徳で
それはめでたいことであった
(ひとこと)
子を探す母の哀れさより、「月と鐘」の取り合わせが面白い曲の終わりはハッピーエンド。
千満は思慮深い子で、母にも孝行を続けたのでしょう。金持ちになるのは結構ですが、この結末は曲全体を安っぽくしているような気がします。詞章もありきたりですし。