あらすじ
大迹皇子が皇位即位のために上洛した旨を、使者が照日の前へ告げて文と花筐を渡す。照日は悲嘆の中、文と花筐を抱いて里へ帰る。皇子は継体天皇となり、紅葉の御幸に出かけるが、そこへ物狂いとなり都へ上ってきた照日が出くわし、官人が侍女が持った花筐を打ち落とす。照日は官人を非難して思慕を示し、物狂いを勧められると李夫人の曲舞を語り舞い、漢王の思慕を我が身に喩える。継体天皇は花筐を自分が与えた物だと認め、再び照日を召すことにして還幸する。
次第 ワキとワキツレ
君の恵みもたかてら(高・高照)す 君の恵みも高照らす
紅葉の御幸早めん
(照り映える紅葉と同様に) 大君の恵も高く照り輝き あまねく照らしている時
君は照り映る紅葉をご覧にお出かけ その道を急ぐことにしよう
(ひとこと)
シテは「照日」と言う名であるのに、紅葉のように輝くのは女を捨てた天皇の方です。
「高照らす」は枕詞でしょうか。「高」所から民を照らしている感じ。
山の高い所にまで紅葉が進んでいる光景も目に浮かんできます。
結末 地謡
御遊(ギョユウ)もすでに 時過ぎて 御遊もすでに 時過ぎて
今は還幸 なし奉らんと 供奉(グブ)の人びと おん車遣り続け
もみぢ葉散り飛ぶ 御先(ミサキ)を払ひ
払ふや袂も 山風に
誘はれ行くや 玉穂の都 誘はれ行くや 玉穂の都に
つき(着・尽)せぬ契りぞ 有難き
ご遊覧もすでに 時移り 紅葉の御幸もすでに刻限となって
今は還幸をおさせ申し上げゆと 御供の人々が お車を進め続けて行けば
紅葉の葉が散り飛ぶ 行列の先を払い
払い清めると照日の前の袂も 山風に
なびき 連れられて行くのは 玉穂の都 玉穂の都で
尽きせぬ契りを結んだのは まことに有難いことである
(ひとこと)
渡辺保氏は、この場面の「もみぢ葉」を、宮廷で殺されたであろう照日の「血痕」に擬えています。それを読んでからというもの、私は「葉」の形、そして「散り飛ぶ」から血痕以外を想像することができません。
結末の詞章が、物語の先を暗示している面白さです。
照日の袂を山風が翻すのは、もう冬がそこまで来ているから。紅葉(照日)の終わりですね。
(ひとこと)
渡辺保氏は、この場面の「もみぢ葉」を、宮廷で殺されたであろう照日の「血痕」に擬えています。それを読んでからというもの、私は「葉」の形、そして「散り飛ぶ」から血痕以外を想像することができません。
結末の詞章が、物語の先を暗示している面白さです。
照日の袂を山風が翻すのは、もう冬がそこまで来ているから。紅葉(照日)の終わりですね。