あらすじ
美濃国野上の遊女花子は、東国下向の吉田の少将と扇を交換して別れた後、扇ばかりを眺めているので、漢の「班婕妤」に例えられ「班女」と呼ばれた。閨に籠り勤めをしない花子は追放され、一方、吉田の少将は都への帰途で野上に立ち寄り、花子の不在を知るやいなや上京し糺(タダス)の森に参詣する。そこへ物狂いとなった花子が現れ、少将との再会を神に祈り、都の男の所望に扇によせて恋心を語り舞う。少将は班女を呼びよせて扇を取り交し、二人は元の契りを結ぶ。
次第 少将とトモ
帰るぞ名残富士の嶺(ネ)の 帰るぞ名残富士の嶺の
ゆき(雪・行)て都に語らん
帰るのだ 富士の嶺に名残を惜しんで 帰るのだ 名残の尽きない富士の嶺の
雪をあとに 都へ行って 富士の雪のことを語ろう
(ひとこと)
詞章の「雪」は結末にも出てきます。「班婕妤」が寵を失った自分を「月の様に円い雪のように白い団雪の扇」に例えたことが元になっています。。中国の扇はウチワのようだったのですね。
都へ「帰るぞ」との強調や、富士の雪を土産話にしようという謡い手の意思が感じられるめずらしい次第です。
結末 地謡
(輿の内より)
取り出だせば 折節黄昏に
ほのぼの見れば夕顔の 花を描きたる扇なり
この上はこれみつ(これ見・惟光)に 紙燭(シソク)召して
ありつる扇 ご覧ぜよ互いに
それぞと知られしらゆき(知らる・白雪)の
扇のつま(端・夫・妻)の形見こそ
妹背の中の情けなり 妹背の中の情けなり
扇を取り出したので (従者は花子に扇を渡す)
折りしも夕暮れの薄明かりにぼんやりした中で見ると 花を描いた扇である
(花子は少将に自分の扇を渡す)
この上はお付きに灯をお命じになる
こちらの扇を ご覧下さいませ と言って互いに扇を見て
それぞれあの人と分かり合えたのである
愛する人の形見としての扇こそ 夫婦の中の愛情を示すものなのである
(ひとこと)
省かれた文章が多いのは、引用されている「源氏物語」の原文を読むようです。
少将が持つ花子の扇は夕顔の絵。「惟光に紙燭召して~ご覧ずれば」は、源氏の「夕顔」の詞章と同じ。夕暮の情景が目に浮かんできます。しかし少将の扇はどんなものだったのでしょう。
二人の再会が「誰そ彼」の時間帯に行われた意味を思います。
遊女と貴公子の恋が真実ハッピーエンドとなるのか。「扇のつま・妻・夫」と掛け詞になっていますけど・・。
(ひとこと)
省かれた文章が多いのは、引用されている「源氏物語」の原文を読むようです。
少将が持つ花子の扇は夕顔の絵。「惟光に紙燭召して~ご覧ずれば」は、源氏の「夕顔」の詞章と同じ。夕暮の情景が目に浮かんできます。しかし少将の扇はどんなものだったのでしょう。
二人の再会が「誰そ彼」の時間帯に行われた意味を思います。
遊女と貴公子の恋が真実ハッピーエンドとなるのか。「扇のつま・妻・夫」と掛け詞になっていますけど・・。