「神坂雪佳」の木版画、タイトルは「磯馴松」です。海風のために幹や枝が地面を這うように生えるのが磯馴松(そなれまつ)でしょうに、この松は曲がりが少ない。
須磨の浦 渚にたてるそなれ松 しづえは波のうたぬ日ぞなき 続後拾遺集
やはり、下枝が常に波に洗われているような松でなくっちゃ。
中央公論の「谷崎源氏」の「さし絵」はどうだったかと、「須磨」のページをめくってみました。
なあんだ。文化勲章の「福田平八郎」の松の方がもっとまっすぐ。二人とも京住まいで磯馴松とは縁がなかったのでしょうか。
「風情に富んだ夕ぐれに、海が見渡される廊にお立ち出でなされて、たたずんでいらっしゃるお姿の、物凄いような美しさは・・・この世のものともお見えになりません・・・沖の方を多くの舟が謡い騒ぎながら漕いで行くのなども聞こえます・・」
光源氏も谷崎も、日本画家もみんなおっとり、雅な松の景色です。